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Ye Maaya Chesave 2010年 155分(162分とも)
主演 ナーガ・チャイタニヤー & サマンタ
監督/脚本/出演 ガウタム・ヴァスデーヴ・メーノーン
"あなたの事が好き……でも、これ以上のことは望まない"
"友達のままでいましょう"
この世の中にはたくさんの女性がいるのに、なぜ僕はジェシーを愛しているのだろう?
その日、教会で執り行われたジェシーの結婚式に参列するカールティクは、彼女を正視できないまま苦しんでいた。なぜ彼女は「私たちが結婚したら、幸せになるね」と言ったのか。カールティクは彼女の自由な心を愛していたのに……「僕たちは、誰を愛するのかを事前に決めなくてはいけないなんて…」
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ハイデラバードの大学の工学部を卒業してエンジニアの仕事を探していたカールティクは、その実映画監督を志望して、親友クリシュヌドゥ(別名クリシュナ)のツテを使って映画業界で職探しをしていた。
そんなある日、自宅の上階に住むマラヤーリー・クリスチャン(マラヤーラム語を母語とする東方教会所属のキリスト教徒)家族の娘ジェシーの美貌を垣間見て、一目惚れしてしまう。その日から密かに彼女を追いかけたり、影から見守りつつなんとか仲を縮めようとするカールティクの不器用なアプローチが続くある朝、出かけようとする彼女に同行するカールティクは、話の勢いから「弟みたいに思われるのは嫌だな…だって僕は……君を愛しているから」と口走ってしまう。
厳格な父親の前で異性と口を聞いていたと知られればタダではすまないと語るジェシーは、カールティクのプロポーズに怒りの目を向け、そのまま彼の前を立ち去ると、以後姿を見せなくなってしまう。
自分の言動を後悔するカールティクは、妹から「ジェシーは、おばあさんに会うため両親の実家のあるケーララ州のアレッピー(別名アーラップラ)に帰省している」と聞き付けるや否や、クリシュヌドゥを連れて一路アレッピーへ旅立って行く……。
挿入歌 Aakaasam ([貴女への愛は] 空のように広大)
タイトルは、テルグ語(*1)で「貴方は、どんな魔法をかけたの?」の意だそう。
劇中で、主人公の親友クリシュヌドゥ(*2)がいうセリフとして出てくる。
同時製作で、シランバラサン&トリシャー主演のタミル語(*3)版「Vinnaithaandi Varuvaayaa(私のために、空を飛んでこれる?)」も作られているロマンス映画(*4)。
2012年には、本作監督ガウタム・ヴァスデーヴ・メーノーン自身によるヒンディー語(*5)リメイク作「Ekk Deewana Tha(狂った恋人たち)」も公開。
のちのテルグ語映画界で大活躍するサマンタの映画デビュー作であり、映画批評サイト フィルム・コンパニオンにて「この10年中のテルグ語映画ベスト25」の1つに選出されている映画。
初恋から始まる、不器用で一途な恋愛模様の美しさを詩的な爽やかに描いていく青春讃歌なロマンス映画の傑作。
タミル語映画界の名優シランバラサン&トリシャーと言う映画スターを用いた「Vinnaithaandi Varuvaayaa」に対して、全く同じ物語でありつつデビュー間もないナーガ・チャイタニヤーと映画デビュー作になるサマンタと言う新人を起用した新人お披露目映画という対比構造も秀逸(*6)。それぞれで、物語を補完する形でのゲスト出演でタミル語版とテルグ語版が関連づけられ、お互いに主人公が劇中で作っている劇中劇に見えてくる構造になっているお話も、リメイク文化旺盛なインド映画界ならではな発想。早速タミル語版もチェックして見たくなる粋な計らいですわ。
その爽やかな初恋の喜怒哀楽をどこまでも美しく切り取る、自由恋愛への憧憬をこれでもかと表現する画面の美しさを増幅させるように、これが映画デビュー作とは思えない堂々としたスターオーラを発揮するサマンタのたくましき眼力も、その将来の活躍を彷彿とさせる映画の武器になってる点も注目ポイント(*7)。この主役コンビ、これが縁になったのかどうなのか、劇中と同じ異教徒同士のカップルとして世間を賑わせた後結婚しているのも色々と示唆的で、本作における本編と劇中劇の2重構造演出を強化させるかのような瓢箪から駒エピソードですわ(*8)。
その主役カールティクを演じた(アッキネンニー・)ナーガ・チャイタニヤーは、1986年アーンドラ・プラデーシュ州都ハイデラバード(*9)生まれ。
父親は映画一族アッキネンニー家出身の映画スター アッキネンニー・ナーガルジュナ。母親も映画一族出身のラクシュミー・ダッグバーティになる、ダッグバーティ=アッキネンニー家の一員(*10)。テルグ語圏を代表する名優アッキネンニー・ナーゲスワーラー・ラーオを始め父方、母方双方に著名な映画人が多数連なっている。
幼少期をタミル・ナードゥ州都マドラス(現チェンナイ)で過ごし、ハイデラバードの大学に通う間に俳優を志してムンバイで演技特訓。米国留学してロサンゼルスでも発声・演技・武術特訓に1年間を費やした後、2009年のテルグ語映画「Josh(熱意)」で映画&主演デビューして、フィルムフェア・サウスのテルグ語映画新人男優賞他を獲得。続く本作と「Vinnaithaandi Varuvaayaa」でサウス・スコープ・アワード主演男優賞他も獲得している(*11)。以降、批評家から賛否両論されながらもテルグ語映画界で活躍中。アイドル的な人気を勝ち取っていく。
2015年に本作ヒロインを演じたサマンタと結婚してヒンドゥー式とキリスト教式の結婚式を行ったと報じられている(が、2021年に離婚)。
2022年には「Laal Singh Chaddha(ラール・シン・チャッダー)」でヒンディー語映画デビューもしていて、2023年にはWeb配信ドラマ「Dhootha(配達人)」に主演。2024年には女優ソビータ・ドゥリパーラーと再婚している。
監督を務めたガウタム・ヴァスデーヴ・メーノーン(略称GVM)は、1973年ケーララ州パーラッカード県オッタパラム生まれ。
父親がマラヤーリー(*12)で、母親がタミル人になり、タミル・ナードゥ州都マドラス(現チェンナイ)のアンナ・ナガル地区(別名ナドゥヴァッカライ)で育つ。
機械工学の学士号を取得する間、同級生たちと映画脚本を作り始めて映画監督を志望するようになるも、母親から広告カメラマンになるよう勧められ、撮影監督兼映画監督のラジーヴ・メーノーンの助手を経て、彼の監督作である1997年のタミル語映画「Minsara Kanavu(電撃的な夢)」で助監督(&ノンクレジット出演)を務めて映画界入り。
自身で企画した映画企画「O Lala」を元に映画製作準備に入るも、プロデューサーにタイトルを「Minnale(灯り)」に改題するよう迫られた他、新人ばかりのスタッフ編成に不安を感じた主演予定のR・マーダヴァンから「マニ・ラトナム監督にストーリーを読み聞かせてほしい」と提案されて重圧に苦しめられたと言う(*13)。
2001年、数々の苦難を経験した上で「Minnale」が公開されるや大ヒットを記録。同年に、R・マーダヴァン主演続投のままヒンディー語リメイク作「Rehnaa Hai Terre Dil Mein(君の心のなかに住んで)」も監督してヒンディー語映画デビューもしている(*14)。
2003年の監督作「Kaakha Kaakha(守るために)」の大ヒットに乗って、そのテルグ語リメイク作となる2004年の「Gharshana(衝突)」でテルグ語映画監督デビュー(*15)。
以降、タミル語映画界を中心にこの3言語映画界で活躍。監督作の多くでカメオ出演、吹替声優を演じていたりもして、2008年の「Vaaranam Aayiram(千頭の像)」でナショナル・フィルムアワード人気作品賞を、2010年の本作でナンディ・アワード脚本賞他を獲得してから、数々の映画賞、功労賞を贈られている。
2011年のアンジャナ監督作「Veppam(心)」でプロデューサーデビュー。2019年からWeb配信ドラマ「Queen(クイーン)」の監督を務めてドラマシリーズにも進出。2018年のタミル語映画「Goli Soda 2(マーブル・ソーダ2)」で主役級デビューしてから俳優活動も本格化させている。
異教徒同士の恋人関係と言う物語を強調するように、ヒロインの実家をキリスト教東方教会発祥の地ケーララに置いて、映画の中盤に風光明媚なケーララ州アレッピーを舞台にする旅行ムービーとしても機能するように映されていく。
映画冒頭のヒロインの結婚式を参列席側から見守る主人公という場面が、映画ラストにつながる「卒業(The Graduate)」的な展開をするのかと思ってたこちら側の思惑は、映画中盤に結婚式シーンが出てくることで「さらに先があるのね!」って驚きと共に霧散し、そこから失恋を通した人生再生劇、異教徒、年齢差、仕事と人生設計と言うインドの恋愛劇について回る壁を1つ1つ確かめるようにしながらより詩的人生劇の美しさを加速させていく語り口の目配りの良いサービス精神のスキのなさが美しい。
自分の失恋譚を初監督作の物語に選ぶカールティクが、映画冒頭から恋に浮かれるたびに「柵を飛び越える」所作を繰り返していくが如く、様々な困難を自分から飛び越えていくたびに少年から大人へと変わっていくように顔つきも変わっていくように見えていく映画マジックも麗しい。そんな計算された演出の静かな目配りが、初恋に翻弄されていく若い2人を見守るように映像を紡いでいくのも、劇中のカールティクが抱く「痛々しくも大事な初恋の思い出」を表現しているようでもあって、どこまでも映像の二重構造が深掘りされていくようでもあるのも常習性を強めていくよう。
タミル語版とラストの展開が違うということなので、早速にチェックしたくもあり…初恋を通した人生の美しさに全振りしている本作の麗しさをこのまま味わっていたいようでもあり……美しい映画であるが故に、別バージョンを覗く勇気がなかなかに悩ましくわきあがりますよホント。完全に製作者たちの思惑にハマりまくってますわー!
挿入歌 Kundanapu Bomma ([君は]美しいお人形)
*のちの2016年に、この歌タイトルを映画タイトルに持ってきたテルグ語映画「Kundanapu Bomma」が公開されている。
受賞歴
2010 Filmfare Awards South 女優デビュー賞(サマンタ)・音楽監督賞(A・R・ラフマーン)・撮影賞(マノージ・パラマハンサ)
2010 Santosham Film Awards 音楽監督賞(A・R・ラフマーン)
2011 CineMAA Awards 監督賞・女優デビュー賞(サマンタ)・撮影賞(マノージ・パラマハンサ)・音楽監督賞(A・R・ラフマーン)
2011 Nandi Awards 脚本賞(ウマルジー・アヌラーダー & ガウタム・ヴァスデーヴ・メーノーン)・女声吹替賞(チンマニ / サマンタの声担当)・批評家選出特別賞(サマンタ)
2011 South Scope Awards アルバム賞・読者選出アルバム賞・BGM賞(A・R・ラフマーン)・男性プレイバックシンガー賞(ヴィジャイ・プラカーシュ / Ee Hrudayam)・女性プレイバックシンガー賞(シュレーヤー・ゴーシャル / Vintunnaava)・作詞賞(アナンタ・スリーラーム / Vintunnaava)・期待のヴォーカリスト賞(ベニー・ダヤル / Vintunnaava)
TSR-TV9 Film Awards BGM賞(A・R・ラフマーン)
MAA Music Awards 男性プレイバックシンガー賞(ヴィジャイ・プラカーシュ / Ee Hrudayam)・女性プレイバックシンガー賞(シュレーヤー・ゴーシャル / Vintunnaava)
Nokia BIG Ugadi Music Awards 期待の作詞家賞(アナンタ・スリーラーム)・歌曲賞(A・R・ラフマーン / Kundanapu Bomma)
「YMC」を一言で斬る!
・「映画のアシスタントなら、誰でもできる仕事だよ」って言ってたけど、ホントにぃ?(ほら、黒澤明は『助監督はうまい飯が作れるヤツでないと』みたいなこと言ってなかったっけ?)
2026.5.15.
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